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□状態：PCGS-MS62(UNC-)

ナポレオン3世時代の1864年に発行された100フラン金貨です。ナポレオン100フランは前期（1855年から1860年）の無冠時代と、後期（1861年から1870年）の有冠時代に分かれます。なおこのコインはナポレオンが月桂冠をかぶった有冠時代のものです。
 
発行枚数は合わせて約45万枚、そのうち前期（無冠）が約35万枚で後期（有冠）が約10万枚です。さらに前期、後期ともパリの鋳造所で造られたタイプとストラスブールで造られたものがあり、それぞれ以下の通りの枚数が発行されました。
 
前期（無冠）
パリ鋳：約33万枚
ストラスブール鋳：約2万枚
 
後期（有冠）
パリ鋳：約7万枚　←ココです
ストラスブール鋳：約3万枚
 
なお鋳造所は裏面に書かれた年号の左のイニシャルで判別し、Aはパリ、BBがストラスブールです。このコインは1864の右側にＡと書かれており、これによってパリで造られたコインだとわかります。
 
このコインは後期タイプで鋳造所はパリですから、すべての年号あわせ約7万枚造られており、更にこのタイプの年号別の発行枚数をみると以下のようになっています。
 
1862年：6,650枚
1864年：5,536枚　←ココです
1865年：1,517枚
1866年：9,041枚
1867年：4,309枚
1868年：2,315枚
1869年：29,000枚
1870年：10,000枚
 
なお1861年にも造られていますが、この年はプルーフ貨のみで、1863年の発行はありません。
 
本貨は1864年ですから発行枚数5,536枚です。ナポレオンの有冠パリ鋳の中では平均的な枚数ですが、世界を見渡してみれば、ほぼ同時期の大型金貨として以下のような発行事例があります。
 
・日本の明治旧20円金貨/1870年（約46,000枚）
・同10円金貨/1871年（約186万枚）
・アメリカ20ドル金貨/1850-1907年（毎年100万枚ほど）
・イギリス5ポンド、ジュビリー/1887年（54,000枚）
・同上オールド/1893年（20,000枚）
 
単年発行、暦年発行の違いなど性格の違いはありますが、ナポレオン100フランは後期有冠パリ鋳というくくりでみると、上記のように約7万枚しか造られてません。少なくとも同時代のイギリス5ポンドに比べ安値に放置されていることは間違いないと思います。なおイギリスの5ポンド（ヴィクトリアのジュビリーヘッド）は同状態で60万円から70万円、オールドヘッドなら100万円近い値が付きます。
 
続いてこのコインの状態ですが、このコインは特にナポレオンのホホや眉、鼻の頭などがでっぱっていますので、このあたりが摩耗したりキズついたりすることが多いです。このコインにもホホのでっぱった部分に少し擦れたあとがありますし、その付近にわずかなキズもありますが、それでも一般的なMS62に比べるとずいぶんとスレやキズが少なく、MS62にしては良好な部類に入るといってよいでしょう。
 
なおPCGSによる本貨1864Ａの鑑定総数は112枚ですが、うち上位鑑定は以下の通りです。
 
MS66:　1枚
MS64:　6枚
MS63:　9枚
MS62+: 1枚
MS62:  22枚   ←ココです
MS61:　17枚
MS60:　0枚
AU58以下：56枚
 
意外とナポレオン100フランの高鑑定コインが少ないことがおわかりいただけると思います。ナポレオン100フランはここ数ケ月でずいぶん値上がりしましたが、状態の良い個体に関してはまだまだ評価不足だと思います。