状態:未鑑定(VF+程度/美品+程度)
グプタ朝はチャンドラグプタ1世の時代(AD320〜335年ごろ)に建国され、最盛期3代目のチャンドラグプタ2世(在位AD380-〜413年)時代に北インドから南インドまで版図を広げました。このコインはチャンドラグプタ2世の息子、クマラグプタ1世(在位AD415年〜450年)の時代に発行された金貨です。
この時代の金貨はクシャン朝時代と同様ディナールと呼ばれており、サイズや重量もクシャン朝時代の金貨の様式を踏襲しています。ただし図柄はずいぶんと変わりました。オモテ面は馬に乗った王様(クマラグプタ1世)で、ウラ面はヒンディーの神様ラクシュミが座椅子に腰かけており、右手でブドウをクジャクに与えています。
この時代の人物や神様の描き方は独特で、クシャン朝時代と違い東洋的な体の柔らかさが感じられます。初代チャンドラグプタ1世と同様、クマラグプタ1世も狩りが好きで、生前に2度アシュヴァメーダ(「馬祀祭」)を開きました、おそらく日本の巻き狩りのようなものだったのでしょう、本貨にもその好みが表れています。
店主はこのグプタ朝のディナールが好きで、良いコインが出てきたら買い付けるようにしています。でも、この時代のディナールは使い込まれていたようで、希少な銘柄や状態の良いものは滅多に出でてきません、とくに馬を描いたコインは入手が困難です。なお、グプタ朝時代に描かれた馬は、本貨のように右を向いたものと左を向いたものがありますが、出現頻度は右向き(本銘柄)のほうが少ないように感じます。
さてこのコインについてです。
ご覧のようにある程度摩耗が進んでいますが、オモテのクマラグプタ1世の表情は残っていますし、馬の顔と目、宝石で飾った編み込みのたてがみも見え躍動感があります。ウラに描かれているのはヒンドゥー教の女神ラクシュミーで、籐の椅子に座り、クジャクにブドウの房を与えています。ウラはセンターが少しずれており、ラクシュミーの頭が少しはみ出ていますが、ご覧のように表情は残っています。一点ご注意いただきたいのは12時のフチについたキズです(10番目の写真でご確認ください)。
グプタ朝のディナールは摩耗が進んだものが多く、概して状態は良くありませんが、本貨はグプタ朝ではかなりの高状態です。馬の図柄も残存数が少なく、近年はオークション価格も上がってきました。グプタ朝時代のディナールは、描かれている図柄によって人気に差があります。このコインはグプタ朝中期のコインで、この時代特有の自由な表現を見せています。グプタ朝のディナールの魅力は、型にはまらず自由でインド的な人物姿にあると思います。
本貨はケースに入っておりませんので、手で直接触れて頂くことができます、皆さんも古代の手触りをお楽しみください。直径19ミリほどの小型の金貨ですが、このサイズが古代インドやギリシャ・ローマ時代の標準的なサイズです。
なお上記のように本貨は12時の位置、クマラグプタ1世の後頭部のフチに小さなキズがあります、その点を考慮して価格を少し安く設定しました。このキズがなければ先月アップしたチャンドラグプタ同様、設定価格は96万円になります。
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■サイズ:直径19ミリ、重さ約7.8グラム
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