状態:ANACS‐AU58(EF+/極美+)
グプタ朝が衰退した7世紀以降、インドのコインは急速に衰退期に入り、この時代のインドコインは、金貨や銀貨はもちろん銅貨ですらほとんど見るべきものはありません。おそらくこの時代、インドでは貨幣経済そのものが衰退してしまったのではないかと思います。その後インドで再び貨幣が活発に発行され始めるのは、12世紀にイスラム系の国家が成立して貨幣経済が活発になってからです。
本貨は10世紀から13世紀あたりに、インド南部のゴア中心とする地域にあったカバンダ朝で発行された小型の金貨パゴダです。当時のインドはようやく長い「コイン不毛の時代」から目覚め、打刻金貨の発行が始まったばかりの時代です。カバンダ朝はヒンドゥー教の国でしたが、イスラムが持ち込んだ貨幣経済の影響を受け始めていたのかもしれません。発行されたのはジャヤケーシー3世(在位12世紀末〜13世紀初頭?)の時代で、オモテは躍動感のある可愛らしいライオンの姿が描かれています。一方でウラは王の業績をたたえた5行の文字が、ナーガリー文字で描かれているそうです。
さてこのコインについてです。
ANACSの評価はAU58で、この銘柄にしてはまずまずの状態です。オモテはやや弱うちでライオン君の顔が少し不明瞭ですが、胴体の方はしっかりと打たれています。ウラは少しセンターがずれていますが、ご覧のように5行詩は切れずに入っています。AU58の評価通り、オモテ/ウラとも少し摩耗が見られますが、キズやスレ、洗浄痕などは見られず大きな欠点のないコインです。
このコイン自体さほど多く残っておらず、こうやって市場に出てくる機会はそれほど多くはありません。なお世界の金貨カタログ、フリードバーグによれば、この銘柄(Fr‐308)の価格ガイダンスはVF‐XFクラスで1500ドルとなっています。同時代の「ゾウさんパゴダ」のカタログ評価がVF‐XFクラスで650ドルですから、この銘柄の希少性がわかります。重さは4.5グラムほど、直径は19ミリほどの小型の金貨ですが、同時代の金貨に比べるとやや大ぶりです。図柄も面白く十分な時代感もありますから、インドの富裕化に伴って、今後人気化してゆくコインだと店主は思います。
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■サイズ:直径19ミリ、重さ約4.5グラム
■本貨は、アメリカの大手鑑定会社のANACS社の鑑定ずみケースに入っており、真贋は同社によって保証されておりますのでご安心ください。
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