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□状態：NGC-MS63 PL(UNC)、プルーフライク

ユーゴスラビアで1932年に発行された4ダカット（ドュカタ）金貨です。
オモテ面は君主のアレキサンデル1世と王妃マリアです。第一次世界大戦がバルカン半島のサラエボから始まったように、当時のバルカン半島は政治的にも民族的にも複雑に入り組み混乱していました。本貨は第一次世界大戦終結後に形成された、ユーゴスラビア王国のアレキサンデル1世時代に発行されたものです。アレキサンデル1世は本貨が発行された2年後の1934年に、フランス外遊中マルセイユで暗殺されました。このコインは在位中（ユーゴスラビア王としては1929年から1934年在位）に発行された唯一の大型金貨です。
 
さてこのコインですが、ご覧のようにオモテ面のマリアの首元あたりに複数のヘアラインがありますが、NGC社の評価MS63が示すように摩耗はほとんどありません。見栄えの良いとてもきれいなコインです。なにぶんプルーフやプルーフライクのコインは写真撮影が難しく、過剰にヘアラインが写ったり、また逆に光源の位置によってはヘアラインが飛んでしまったりします。そのようなことが極力無いように、特にオモテ面は複数の写真を載せました。なお4番目の写真はあえてヘアラインが目立つよう、横から光を当てて撮影しましたが、実際に見た感じはこの写真ほどヘアラインはみえません。
  
この銘柄は10,000枚造られており発行枚数はそこそこ多いのですが、NGC社の評価通り、希少なPL(プルーフライク)の状態です。おそらく初期の刻印で打たれたものでしょう。PLはプルーフではないものの、まるでプルーフ貨のように鏡面状の輝きがあることを意味しています。なおNGC社の鑑定分布によりますと、本銘柄（1932年のトウモロコシ・ミント）の総鑑定数は14枚、そのうちPLの鑑定は6枚です。さらにそのPL鑑定の内訳をみますと、最高鑑定はMS63PLが本貨を含み3枚、続くMS62PLが2枚、MS61PLが一枚です。
本貨に限らず、近年PLと評価されるコインは、その希少性の高さから高値で売買される傾向にあります。
 
なお本銘柄は1931年から1933年にかけて発行されました。カウンターマークは二通りあり、一つは「剣と鳥（KM-14.1）」で、もう一つが本銘柄「トウモロコシ（KM-14.2）」です。発行枚数の内訳は不明ですが、市場の出現頻度を見ると「剣と鳥（KM-14.1）」のほうがやや多いようです。NGC社の鑑定枚数をみても同様で、「剣と鳥（KM-14.1）」が78枚に対し、「（本貨」トウモロコシ（KM-14.2）」は48枚です。なお両者を合わせるとNGCによって131枚（注）が鑑定されていますが、うちプルーフライクは16枚のみです。クラウスのカタログ価格をみても「トウモロコシ（KM-14.2）」ミントのほうが少し高め評価です。
 
注）カウンターマークがない個体も5枚鑑定されています。

なお5番目の拡大写真のように、本貨のオモテ面4時のフチ近くに「トウモロコシ」を描いたごく小さなカウンターマーク（刻印）があります。これが「トウモロコシ」と呼ばれるKM-14.2の特徴です。
 
ウラ面はハプスブルグ家の紋章「双頭の鷲」ですが、ご覧のように大変良い状態で、ヘアラインもほとんど見られません。
 
第一次世界大戦（1919年ヴェルサイユ条約によって終結）によってヨーロッパは荒廃しましたが、このコインはヨーロッパで大型の金貨の発行が途絶えたこの時期に発行されました。本貨はその見栄えの立派さ（直径約38ミリ）の割には重量が少なく、金の含有量は0.44オンスほどしかありません。きっと十分な予算がないなか、民族の統一意識を作り上げようと国を挙げ発行されたのではないかと思います。そういう意味では感慨深い金貨ではないかと店主は思います。