□状態：NGC-XF Fine Style
セステルティウスは当時使われていた大型の黄銅貨です。
黄銅は青銅よりも高価でかつ美しく、造られた当時は金色に輝いていたといわれています。セステルティウスは初代皇帝アウグストゥスの貨幣改革によって黄銅貨に衣替えされましたが、それ以前は小型の銀貨でした。おそらく銀の調達が困難になり銀貨から銅貨に変わったのではないかと思います。
ちなみに当時の平均的なローマ市民の年収は1000セステルティウスだったと試算されていますので、大雑把に言えば当時の1セステルティウスは現在の価値で5000円程度ではなかったでしょうか。
セステルティウスの特徴はなんといってもサイズの大きさです。一般のセステルティウスは直径24ミリから35ミリほど、重量23グラムから28グラムほどもあります。サイズが大きいだけにデザインも細かく刻まれており、価値は当時の金貨（アウレウス）には及びませんが、表面に描かれた皇帝の肖像や裏面のデザインなども細密で、美術品や歴史資料として見た場合、むしろセステルティウスのほうが優れているのではないかとさえ思えてしまいます。
さてこのコインです。表面に描かれているのはトラヤヌスで、帝政ローマ13代目の皇帝で、いわゆる「五賢帝」の二番目です。トラヤヌスは当時ダキアとよばれたヨーロッパ東部に侵攻し、2度に及ぶ「ダキア戦争」に勝ち版図を広げました。表面のフチにはIMP CAES NERVA TRAIANO OPTIMO AVG GER DACとラテン語で書かれていますが、これは皇帝ネルヴァ・トラヤヌス・オプティモ（最高の）・アウグストゥス・ゲルマニクス・ダキコの略で、これがトラヤヌスの正式な（名前+称号）です。そのあとにPM TR P COS�� P Pという文字もみえますが、PM(最高神祇官)、TR(護民官職権)、COS��(コンスル6回就任)、PP(国父)の略(注)、すべてトヤヤヌスの権威付けのために打たれたものです。もちろんこれはトタヤヌスに限ったことではなく、当時の皇帝はみな自らの功績をアピールするためにコインを造りました。当時の皇帝が毎年のように図柄を変えてコインを鋳造したのは、コインが為政者の権威付けの意味合いを持っていたからです。
注）コンスル：民会の主宰と軍団の指揮者を兼ねた古代ローマ帝国の高官、Consul
最高神祇官：Pontifex Maximus
国父：Pater Patriae
裏面は幸運の神フェリシタス立像が描かれています。フェリシタスは右手にコーヌコピア、左手には神の杖（カドュケウス）を持っています。フェリシタスの腰あたりに刻印されたSCの文字は「元老院（Senatvs Consvlt）決議」の略で、このコインが元老院の承認のもとに発行されたことを表しています。コインのフチに描かれたSENATIVS POPVLVS ROMANVSは「元老院とローマ市民」の意味で、この時代のコインにしばしばみられる刻印です、おそらく独裁色をおさえ元老院やローマ市民との協調をアピールするためのものでしょう。
セステルティウスは日常使われていたコインだけに状態が良いものは稀です、表面(おもてめん)はツルツルで、皇帝の表情はほとんど読み取れず文字も解読不能なものが大半です。鑑定してケースに入れに値するコインもめったにないようで、大半は裸のコインです。一般的なセステルティウスの状態はG（Good）からF(Fine)程度にすぎず、そのようなコインなら数千円から数万円程度で入手可能です。
このコインも含め「ときいろ」のセステルティウスはどれも状態の良いものを厳選し、皆様にお持ちいただきたいものだけを出品しております。このコインも状態が素晴らしく、NGCの鑑定でXFとなっており、刻印が裏表ともほぼ中央に打たれ、鑑定会社はFine Styleとプラスの評価をしています。このような高状態なセステルティウスは稀にしか出てきません。
□セステルティウスの鑑賞について
このコインは直射日光下でご覧になることをお勧めします、長時間太陽光に充てると変質の恐れがありますが短時間なら問題ないでしょう。外光の元でご覧になれば、このコインに限らずセステルティウスのすばらしさをお判りいただけると思います！
■サイズ：直径約32ミリ、重さ推定約27グラム（推定です、ご注意下さい）
なおアメリカの2大コイン鑑定会社のうち1社、NGC社の鑑定済みケースに入っています。真贋はNGC社によって保証されていますのでご安心ください。
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